女性

09/06/17
N氏の奥さんの指の話。

行きつけの飲み屋の常連客の1人にN氏という男がいた。

普段は人の良い大人しい男で、私も何度か親しく飲んだこともあるのだが、N氏には若い奥さんがありながら、どうにも女癖がよろしくないという欠点があった。

N氏の奥さんは相当なやきもち焼きらしく

「やりにくくてしょうがない」

というようなことをN氏はよく愚痴っていた。




何年か前のこと。N氏の悪い癖がでて店の女の子と男女の仲になってしまった。

N氏の悪行はすぐに奥さんに知れることとなり、激高した奥さんから店に電話がかかるということもしばしばであったが、N氏と店の女の子の関係はだらだらと続いたらしい。

ある日、店にN氏の奥さんから小さな小包が女の子宛に届いた。

たまたま店に居合わせた私は、女の子が何だか気味が悪いというので、代わりに私がその小包の封を開けた。

小包の中には白いガーゼでていねいに梱包された、N氏の奥さんのものと思われる切断された女の小指が収められていた。

さすがにこれにはまいったのか、女の子はN氏と別れお店もやめてしまい、N氏も店に顔を出すことはなくなった。

何日か前のこと。私はほとんど忘れかけていたN氏と街で偶然再会した。

N氏は女性連れで

「Nの家内です」

とあいさつしたその女性の手には、右手の親指と人差し指の2本しか指がなかった。