バレンタインデー

334:
恋人は名無しさん 2010/02/13(土) 23:46:19 ID:By7YpM/X0
バレンタインになると思い出す自分的修羅場を流れも読まずに投下。 
前置きも全体的にも長い上分かりにくいかもなので初めに謝っとく。ごめん。 

その当時大学生だった私は某ファーストフード店でアルバイトをしていた。 
高校生のときから始めていたので3年目くらいだったが、その店は私が
勤めているその3年間で4人も店長が代わるくらい、人事の入れ替わりの激しい店でもあった。 

大体の店長はみないい人だったのだが、3年目の冬に別の店から
異動してきた店長に関しては、ヘルプできていた他店の子から、
様々な噂が流れてくるくらい少し変わった人だった。 



噂といっても

「奥さんがちょっと精神的におかしくて病院に通ってる」

とか

「前の店でアルバイトの高校生と浮気をしていたから異動にさせられた」

とか
 
「そのアルバイトの子に奥さんが店で包丁突きつけて大騒ぎになった」

とか、そういう噂に尾ひれがつきまくって大げさになったようなものばかり。 

大学生でサークル活動が忙しくなり、週2回ほどしかシフトに
入っていなかった上に、夕方からの勤務が多かった私には、
昼間勤務の店長との絡みも無く、彼が異動してきて3ヶ月ほどたっても、
挨拶程度しか言葉を交わすことは無かった。 

その年のバレンタイン、昼間サークルだった私は、サークルのメンバーに
配った義理チョコの余りを持ってバイトへ向かっていた。 
バックヤードに入ると、珍しく夜の勤務の時間にも関わらず
その店長が居て発注などをしている。 
珍しいなぁと思いつつも挨拶をして、制服に着替え、シフトが始まるまでの
短い時間を、パソコンに向かう店長の後ろでぼんやりと雑誌を眺めていた。 

そこで、私はふと余った義理チョコの存在を思い出して紙袋から取り出し、店長に声をかけた。
 
「すみません。今日バレンタインデーでいつもお世話になっているので
これ、良かったらどうぞ」

本当はあげるつもりは無かったんだが
 
「ありがとう」
 
と店長も何事も無く受け取ってくれた。 

「昼間のシフトはフリーターの男の人ばかりだから、今年貰ったのは私からだけだ」

とか、なんだか嬉しそうに言うので

「いつもお世話になってるからです。シフトあまり入れなくてすみません。」
 
などと、たわいも無い話をしてから、時間が来たので仕事に入った。 

携帯におかしな着信が来るようになったのは、その次の日からだった。 
まずはとりあえず非通知で無言。 
こちらが何度声をかけても返事をしない。 

でも誰かが聞いている雰囲気はあるので

「やめてください」

と電話を切ると、また直ぐ電話がかかってくる。 

非通知拒否をすればよかったのは重々承知なのだが、大学のサークルの関係上 
非通知でかかってくる電話もあり、残念ながら対応することが出来なかった。 

悪戯電話に出られないときは留守番電話に成人向けビデオの女の人の音声が
延々と入っていたり、なんだか荒い息遣いが入っていたりと、
気持ち悪い思いをする日が続いた。 

ある日の朝もその非通知着信で目が覚めて、寝ぼけ半分に電話に出たところ、やっぱり無言。
 
「…なんなんですか?」 

今まで直ぐに無言だと分かったら電話を切っていたのだが、 
寝起きのため冷静な判断が出来ず、思わず不機嫌を思いっきり
全面に押し出して声をかけたところ、数秒の無言の末に
 
「……おはよ。」
 
と言われて電話を切られ、まさに寝起きだった自分の行動を
まるで見られているかのようで流石に怖くなった。

彼氏と居る時に電話がかかってきたこともあり、事情を知っていた彼氏に
その電話に出てもらったりもした。 

その日は荒い息遣いの日だったらしく、彼氏が声をかけた瞬間電話は切れたらしい。 
それから暫く電話がかかってこなくなったので、少し安心をしていた。 

しかしまた一週間くらいたつと悪戯電話が再開した。 

サークル関係に関しては用事があれば留守電に吹込みがされる為、 
非通知は電話を取らず留守電にする、ということを実践して対応をしていたが、 
悪戯電話に関してもどんどん留守電の吹込みがされ、 
今度は荒い息遣いとかではなく、多分洋楽のぎゃんぎゃん響くタイプの 
パンクロックの音楽などが延々と留守電に録音されるようになった。 
また何を言っているか分からない叫び声なども吹き込みされ出し、 
これはもうサークル関係の事情などあきらめて、非通知拒否にしようと考えていた。 

けれど私もいい加減、その無言電話に怒りはたまっていたし、 
最後に一言言ってやろうと、かかってきた非通知着信を取って
無言であることを確かめてから携帯の向こうへと、怒りをぶちまけてしまった。 

「いい加減にしろ」

とか

「何考えてんだ」

とかもっと汚い言葉をいっぱい使ったと思う。 

それでも反応の無い無言電話に諦めて切ろうとした瞬間に、
ボイスチェンジャーでも使っているような声で、
 
「今からお前の家にいってやる、お前の家は知ってるんだからな!」 

と叫ばれて向こうから電話を切られた。
 
これからバイトに行く予定だった私は怖くなったが、
家族に誰が来ても出ないように伝えて家を出た。

その日のバイト中、バイト先の電話が鳴った。 
発注のミスかと思いきや電話に出てみれば、あのボイスチェンジャーの声だった。 

「S(私)はいるか?」 

と聞かれ、咄嗟に

「居ない」

と応える私。
 
一旦電話は切れたが、また直ぐ、今度は私の携帯に着信があった。 

本来であればバイト中は携帯に触れないのだが、
一緒にシフトに入っていた男の子の許可を貰い、新しく登録された留守電を
聞いてみるとやっぱり何を言っているか分からない叫び声。 

但し、今回は途中で

「人の男に手ぇ出しやがって…」

という一言が聞き取れた。 

他のバイトの子に聞かせても明らかにそう言っていると言う。 

しかし人の男を取った記憶など全く無く、バイト先の子達の

「いい加減どこかに相談すれば?」

という言葉に頷いてその日は帰宅した。
 
帰宅して家族に聞いても誰も来なかったとのことで、凄く安心をした。 
けど、無言電話の相手について、一つ分かったことがある。 
恐らく犯人は、私がそのファーストフードに勤めているということを知っている人間だ。


ある日、いつものように夕方バイトに向かっていると、店の前に着いたところで 
夕方まで勤務しているパートのNさんから電話があった。
 
「S(私)ちゃんっ?今どこっ?」 

「え、店の前ですけど」 

「来ちゃ駄目、絶対に店に入らないで!」 

あまりに尋常じゃない声に、思わず店の前で立ち止まりNさんに問いかけた。 

「何があったんですかっ?」 

「あのね…きゃー!」

という叫び声と共に電話が切れる。 

強盗かと思い、逃げろと言われたにも関わらず店に飛び込んでしまうと、 
レジのところに立っていたのは強盗には似つかわしくない
真っ赤なコートを着た女の人だった。 

その向こうでNさんがうずくまっている。
 
「Nさん!」 

思わず叫んでNさんの元へ駆け寄ろうとしたところで、
その女の人がゆっくりこっちを振り向いた。
 
その表情はあまりにも生気の篭っていない顔で、ニタニタと笑っている。 
目が合った瞬間にその表情から想像も出来ないほど気持ち悪い優しい声で尋ねられた。 

「…Sさん?」

「はい、そうですけど…」

返事をした瞬間にその女の人の表情が一変した。
 
レジにトレーが並べられているのだが、突然それを掴むと、
目を見開いて私のほうへ向かって何枚も投げ出した。 
殺傷能力は無いが、当たれば痛い。 
回転しながら飛んでくるいくつものトレーから逃げつつ、
私はレジの中に入ってNさんの元に駆け寄った。

丁度休憩中だったバイトの男の子が物音に気づいて慌てて
バックヤードから出てきてくれて、その女を取り押さえ、

「とりあえず警察!」

といわれた為に、私はNさんを抱えるようにして二人でバックヤードに逃げ込んだ。
 
とりあえず警察に連絡をして直ぐ来てくれるとのことでお願いをして、 
その後店長にも連絡をした。 

帰宅途中で、店の近くの本屋に居たという店長も直ぐ戻ってきてくれる
とのことでバックヤードに泣いているNさんを残し、とにかくお客さんが
店に入ってこないようにしようと私は一旦レジのところへ戻った。 

男の子に押さえつけられて諦めたのか、腕をがっしりと掴まれた状態で
女性は店の椅子に座っていたが、うっかり私と目が合ったところで
キッと睨まれて、店中に響く声で叫ばれた。

「泥棒ネコ!」
 
まさか、現実世界で昼ドラみたいな罵声を聞くことになるとは思わなかった。
 
でもやっぱり全く身に覚えが無いため、とりあえず自動ドアがあかないように閉めに走る。 
偶然店内にお客さんは一人もいなかった。お客さんの迷惑にはならなかった。 

数分の後、到着した店長が裏口のドアから入ってきた。 
バックヤードを抜けて店内に入り、その女性を見た第一声が
 
「K…」

という女性の名前。 

お気づきの方もいると思うが、その女性は店長の奥さんだった。 

「なんでこんなことしたんだ!」

という店長の声に奥さんも負けじと声を張り上げる。

「貴方がそこの女と浮気してるからふじこふじこ!」

「そんなことしてない、どこに証拠があるんだ!」

「だって貴方、その子からバレンタインにチョコレート貰ってたじゃない、
だから浮気してるに決まってる!」
 
どうやら店長の奥さんは、私の全力の義理チョコを何やら勘違いしたらしい。 

「あれは義理チョコだろ!」

「そんなこと言って、今年は一個だったとか、私に自慢したじゃない!」

いや、一個って、自慢に全然ならないと思うんですが…。 

どうやら彼女曰く、 
格好良くてモテるうちの旦那が一個しか貰わなかった
→他は断って選りすぐった子からだけ貰った! 
という方程式が成り立ってしまったらしい。 

本当に浮気相手だったらチョコ貰ったこととか隠すだろ、っていう正論は通じない状態。 

色々聞いていくと悪戯電話をしていたのもやっぱり彼女だった。 
電話番号を何から知ったかというと、店長の携帯電話を盗み見したから。 
義理チョコを貰ったと奥さんに報告した時に私の名前を出したから、
直ぐに連絡先は分かったと。 
そこまで聞き出したところで警察到着。 
店長と一緒に、奥さんは連行されていって、事態はようやく収拾した。 

その後散らばったトレーをNさんと拾いながら、床に白い錠剤が
いっぱい落ちていることに気が付いた。 

Nさん曰く、
 
「いきなり店に入ってくるなりSちゃんの名前を呼んで、居ないと告げたら、
ビンに入った薬を半分くらい一気に飲み始めた。 
そこでSちゃんに電話をしてるのがバレて、瓶ごと投げつけられたから散らばった。」

とのこと。
 
それ奥さん大丈夫か?と思って店長に電話をしてみたが、
もう警察署の中にいるからなのか、電話には出なかった。 
その後奥さんがどうなったかというのは聞かないので、
その薬に関してはなんとも無かったんだと思う。 

結局それ以降店長とは会うことはなく、店長は店を辞めていった。 
大事にはならなかったな。 
今思えば色々出来たのかもしれないが、もう関わりたくなかったのと、
無知だった大学生の私にはなんか請求しようとかそういうことは浮かばなかった。 
今思えばもったいないかもw 
ただその月のバイト代には少しだけ上乗せされていたので、
店側からの余計なことするなよってことだったのかもしれない。 

店長からは一度だけ謝罪の電話があった。ひたすら謝られて
奥さんの病気のこととか、過去のこととか(噂は全部本当だった) 
説明された上で

「自分が彼女を支えていく。半年後には子供が出来るし。」

というわけのわからない宣言と報告をされて終わった。 

ただ、一つ不思議に思ったことがあった。

それは、店長からの謝罪の電話が非通知でかかってきたことだ。 

友達にそれを話したら
 
「あんたの彼氏が電話に出るまでかかってきてた悪戯電話は、
店長からだったんじゃないの?」 

と言われて、背筋が寒くなった。 

確かに、電話の内容が攻撃的になったのは彼氏が電話に出た後からだ。 

「旦那の発信履歴にあんたの番号がいっぱいあったから、
浮気だって勘違いしたんだったりして。」

という友達の言葉に、そういえば店長が
 
「自分に娘が出来たら、俺手ぇ出しちゃうかも」

と言っていたという噂を思い出し

(店長も残念な人だったか...)
 
と、思いっきり憂鬱になった。 


以上、義理チョコもむやみにあげるもんじゃねーなーと思った修羅場でした。 


349: 恋人は名無しさん 2010/02/14(日) 00:22:23 ID:kZqtOVK50
立派にホラーだwww


350: 恋人は名無しさん 2010/02/14(日) 00:22:49 ID:e+jWdqMo0
こえーーー! 
なんだその後出しはgkbr 
乙でした。 


356: 恋人は名無しさん 2010/02/14(日) 02:24:05 ID:dGYTC1LY0
乙 
明日サークルで義理チョコ配ろうと思ってたけど…考え直すか… 


357: 恋人は名無しさん 2010/02/14(日) 03:26:38 ID:z5wWkCNT0
わたしも会社で義理チョコ配るのやめよかな… 
こえーー


◇修羅場◇part92