すりガラス越しの人影

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名無しさん@おーぷん 2015/02/27(金)10:09:14 ID:nO8
夏休み、ウチに従姉と従妹が泊まりがけで遊びに来た。

田舎なので日中山や川で遊んで、皆でお風呂に入ると見慣れない木箱があった。
お風呂場は広くて洗濯機なんかも置いてるけど、普段無い真新しい箱、
それも穴が開いてたら怪しいに決まってる。

中を見るとビデオカメラ(父の所有物)

父は泊まりがけの仕事に出てたから、おそらくウチの兄が仕掛けてた。
その後ビデオは水没(事故)した。 

私は従姉妹に平謝りし、従姉妹は私ちゃんのせいじゃないからと慰めてくれた。
大事にしないように従姉妹は黙って遊んで帰っていった。

それから兄が大暴れ。

「私がビデオカメラを壊した!」

と。

「そんなものが風呂場になぜあったのか」

という問いには

「話を擦り替えるな!」

と。

驚くべきことに父は兄に味方した。風呂場に仕掛けたことは不問だった。

父にとって大事なのは跡継ぎの兄で、

「妹や従姉妹、母は逆らうな」

と言った。思いっきりビンタされた。

兄はニヤニヤと満足気だった。

母は中立だった。私に味方したいが、そうすると立場が悪くなるから、
中立が精一杯だったんだろう。絶望した私は家出した。

そしてなんだかんだあった後、都会の従姉妹の家に居候することになり、
高校もそちらで卒業した。田舎の友達と離れるのは辛かったが、
転校先では私の田舎キャラが受けて楽しく過ごせた。

母のことはちょっとだけ心配した。
父と兄はどうでもよかった。

卒業後すぐ就職した。父が叔父(従姉妹の父)にお金を払っていないのは
分かってたので、精一杯稼いで叔父に返した。そして結婚し、子供も出来た。
叔父は従姉妹の子と同様に可愛がってくれた。

母は離婚して母の実家に戻った。
母の実家を継いでいた伯父の嫁(母とは不仲)が亡くなったため、
母は戻ることができた。祖母の面倒を看るという理由だった。

父は反対していたが、

「お前に帰れるところはない!」

と普段から母を責めていたため、

「戻れるものなら戻ってみろ!」

と半ば脅しで離婚届を書いたらしい。

母から連絡を受けた私はすぐそれを提出して

「実家に戻れ」

と言った。

母のためもあったが、むしろ父憎しでそう言った。
ある日突然母は消えたそうで、3日経ってようやく父は離婚に気付いたと。

少し遡るが、兄は私の家出後も学校と近所で盗撮騒ぎを起こしてた。
2件の盗撮騒ぎで兄がやったんだろうという噂が広まった。

というか私が田舎の友達から騒ぎを聞いたとき、

「兄が怪しいかも」

と言ったからだが、結局実際に兄の姿が目撃されてたから、やっぱり・・・となった。

田舎の怖いところで、父の体面が悪かろう、私の嫁入りに
影響するかもしれない、と事件にはならなかった。
何が怖いって、事件にならないのに噂だけは事実として狭い社会でがっちり共有される。
要するに田舎の狭い社会では父・兄は陰で笑い者となり、
外の人だけはそれを知らない状態になる。
もちろん外の人が嫁いできたら何年も経ってからそれを知ることになるが。

しかし、盗撮騒ぎの被害者だった女性が田舎の
お殿様(要するに有力者)の娘だったため逆鱗に触れ、
兄が外から嫁を迎えようとしてもことごとく根回しされて潰された。
兄は父から跡を継がすために進路も制限されており、潰しが利かない。
とある伝統工芸しか出来ない兄。

父から逃げることも出来ず、嫁を迎えることも出来ず、
時は過ぎ、父が弱ってきてもどうすることも出来ず、
お殿様の根回しが無くなっても嫁のアテも無いまま。

時折訪ねる叔父によると、

「いまだ嫁取りを諦めていないようだが、二十代前半の〜と寝言を言ってる」

「そういえば昔、父から従姉妹を兄の嫁にと言われたこともあるが、もちろん断った」

と。

父から私宛ての手紙があったが、

「婿をとって戻ってきてくれ」

と書いてた。

とっくに結婚して子供もいるけど、知らせずに

「お断りします」

とだけ書いて投函した。

あんな家は潰れて無くなってしまう方がいい。


奥様が語る因果応報